プログラミング言語SML#解説 4.0.0版
16 SML#の構造

16.2 分割コンパイルモードのプログラム

分割コンパイルモードのプログラムは,ソースファイル とそのインターフェイスを記述したインターフェイスファ イルの集合である. ソースファイルの内容sourceは以下の通りである.

source ::= (interfaceFileSpec)?  sourceProgram
interfaceFileSpec ::= _interface  "filePath"
sourceProgram ::=
 | decl  sourceProgram
 | topdecl  sourceProgram

ソースファイルに対応するインタフェイスファイルの指定 interfaceFileSpec指定しない場合でかつ,ソースファイルS.smlと同一ディレクトリにサフィクスが.smiの同一の名の ファイルS.smiがあれば,そのファイルが暗黙に インタフェイスファイルとして指定される. filePathは相対パスであり, OSによらず,ディレクトリの区切り文字には/(スラッシュ)を用いる.

インターフェイスファイルの内容interfaceは,ソースファ イルが必要とする他のコンパイル単位の参照宣言の列requireListと, ソースファイルが他のコンパイル単位に提供する仕様の列provideListを記述する.

interface ::= requireList  provideList
requireList ::=
 | _require  (local)?  interfaceName  requireList  (init)?
 | _require  (local)?  sigFilePath  requireList  (init)?
interfaceName ::= smiFilePath
 | librarySmiFilePath
provideList ::=
 | provide  provideList
provide ::= provideInfix
 | provideVal
 | provideType
 | provideDatatype
 | provideException
 | provideStr
 | provideFun

requireListは,ソースファイルが参照する他の ソースファイルのインターフェイスファイル(smiファイル)パス, ライブラリのsmiファイル名, またはシグネチャファイルのパス名を指定する. _requireに続くlocalは, その_requireで指定されたインターフェースファイルが ソースファイルからのみ参照され, provideListからは参照されないことを表す. このlocalを適切に加えることによって,不要なインターフェース ファイルの読み込みを抑止し,コンパイル時間を短縮することができる. initは,指定されたインターフェースファイルに対応する プログラムが,_requireが書かれたプログラムよりも先に必ず評価 されることを表す注釈である. provideListは,ソースファイルが,他のコンパイル単位 に提供する宣言の仕様である.

smiFilePathsigFilePath,および librarySmiFilePathは,_requireが書かれたファイルから 他のファイルへの相対パスである. OSによらず,ディレクトリの区切り文字には/(スラッシュ)を 用いる. パスが.(ピリオド)から始まっておらずかつファイルが存在 しない場合は,コマンドラインで与えられたロードパスからファイルを検索する.

SML#が提供する代表的なライブラリのインターフェイスファイ ルには以下のものがある.

ライブラリsmiファイル名 内容
basis.smi Standard ML基本ライブラリ
ml-yacc-lib.smi yacc, lexツール
smlformat-lib.smi SMLFormatフォーマッタ生成ツール
smlnj-lib.smi Standard ML of New Jerseyライブラリ
ffi.smi Cとの連携サポートライブラリ
thread.smi マルチスレッドサポートライブラリ
reify.smi 動的型付けサポートライブラリ
smlunit-lib.smi 単体テストツール

宣言に対応するプロバイドは以下の通りである.

  • 核言語の宣言とインタフェイスの対応

    宣言 (decl) 対応するプロバイド (provide)
    infixDecl provideInfix
    valDecl provideVal
    valRecDecl provideVal
    funDecl provideVal
    datatypeDecl provideData
    typeDecl provideType
    exceptionDecl provideException
    localDecl
  • モジュール言語の宣言とインタフェイスの対応

    宣言 (topdecl) 対応するプロバイド (provide)
    strDecl provideStr
    sigDecl
    functorDecl provideFun
    localTopdecl

    シグネチャファイルは,インタフェイスに直接 _require sigFilePath 宣言で参照する.

以下に簡単なプログラム例を示す.

  • 例1(基本ライブラリの使用)

    ファイル コード
    hello.sml val _ = print "こんにちは,SML#へようこそ\n"
    hello.smi _require "basis.smi"

    コンパイルと実行例

    $ smlsharp hello.sml
    $ ./a.out
    こんにちは,SML#へようこそ
    $

  • 例2(分割コンパイル)

    ファイル コード
    hello.sml val _ = puts "こんにちは,SML#へようこそ"
    hello.smi _require "puts.smi"
    puts.sml val puts = _import "puts" : string -> int
    puts.smi val puts : string -> int

    コンパイルと実行例

    $ smlsharp -c hello.sml
    $ smlsharp -c puts.sml
    $ smlsharp -o hello hello.smi
    $ ./hello
    こんにちは,SML#へようこそ
    $